質問書への回答_日本周産期・新生児医学会より

先日25日に届けた、各関連学会へ質問書にたいし、日本周産期・新生児医学会からの回答が届きました。

同学会による「SARS‐CoV‐2 感染が証明されるか疑われる⺟体からの分娩での新⽣児蘇⽣に係る指針 第 2 版 」3ページ目には、

7.早期⺟⼦接触

 我が国で⾏われている蘇⽣後またはルーチンケア後の早期⺟⼦接触は⺟⼦関係確⽴や⺟乳分泌促進などの効果があるが、接触は⺟児間感染リスク増加が考えられるため⾏わない事を推奨する。

とあります。


 世界では久しく早期母子接触の利点、母乳育児の感染予防効果が認められています。

新生児の免疫力は未発達で、早期母子接触と母乳育児によって補われます。コロナ陽性の母親から生まれた赤ちゃんが必要なのは、母親から離されることではありません。感染予防対策(マスク・手洗いなど)をした その女性と同室で母乳育児を続けることです。

WHO・UNICEF は第一波の 2020 年 3 月から、たとえ女性が陽性であっても母子同室であることを推奨しています。母乳育児の肯定的効果(ベネフィット)は感染のリスクを上回るためです。

 しかし厚生労働省、三学会、日本新生児育成医学会ともに、いまだに母子分離の対応を勧めています。新生児がコロナ陽性になった場合、重症化は珍しいことがこれまでの日本内外の症例から分かっています。にも拘らず厚生労働省の一般の方向け Q&A は感染リスクの現実や母乳育児のベネフィットを伝えておらず、むしろ母乳育児が危険かのように歪曲し、女性が希望するなら自己責任で、と暗に脅す文言があります。

 入院中の新生児を含む子どもには、親もしくは親の代わりとなる大人に付き添われる権利があります。国連のこども権利憲章(日本は批准)に基づいて1988 年に作られた EACH 病院の子ども権利憲章にはそれが明記されています。

 出産直後の母子分離の影響は甚大です。不安や社会的困難を抱える女性は、母子分離の悪影響 を受けやすく、将来の虐待のリスクは 4 倍ともいわれています。この新型コロナ流行下にコロナに感染し、立ち会いなしに医療介入を受けながら出産する女性が、まさにこの不安の高い状態に置かれ、母子分離されることでその後の育児の不安・困難が増えることは明らかです。

 妊産婦のストレス上昇 により母子の愛着形成、育児不安、産後うつがすでに増加しているという報告があります。そして長期的にみても、女性・赤ちゃん・家族全体の発達障害・精神疾患、ひいては虐待・自殺率の増加も懸念されます。

日本の周産期死亡原因の一位は自殺です。

産後うつを含む精神疾患のケアの改善が求められています。産後うつは産後ケアだけの問題ではなく、妊娠期のうつや出産体験との関連もあります。
妊娠中から継続的に不安を取り除く助産的アプローチと出産体験をよりポジティブにする必要があります。

 人間にはからだに起こることを自分で決める権利があります。しかし現在のコロナ禍の産科ケアでは、その基本的な人権が蔑ろにされています。私たちは、女性の妊娠・出産・子育てにおける苦悩やストレスの訴えにもっと耳を傾け、公正な情報のアクセスを保証し、医療体制の中で個人の権利が尊重される必要があると考えます。 

リプロ♡リサーチ実行委員会 Reproductive Research Executive Committee

産婦人科医療•助産に関わる医療者•支援者、研究者など有志の集まりです。新型コロナ禍の妊娠・出産に関する緊急アンケートを集めています。妊婦健診、出産前教室、立会い出産、転院、搬送、帝王切開、母児同室、陽性時の出産、授乳など、あなたの経験を教えて下さい。 あなたの回答は今後のよりよいあり方を考える手がかりになります。 そのほか、妊娠・出産に関する情報を発信していきます。

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